ぼろぼろタオルケットが手放せない
わたしが偏愛してやまないタオルケットがある。家にいる時は、片時もそのタオルケットを手放さない。わたしの心の安定剤であるタオルケット=カレなのだが・・・
もはやカレに原型はない。わたしが執拗にカレに愛撫をくり返すからだ。
カレの自己犠牲の愛でわたしは心満たされ至福の時間を過ごしている。
カレのからだの一部である糸屑が部屋中に散乱している。時には洋服に着きまとい、街への侵略も謀っている。どうやらカレは世界征服をねらっているようだ。
夫はカレをこう呼ぶ「ボロぞうきん」と。わたしには理解不能だ。わたしの心を満たしてくれる唯一のカレにその愛称はふさわしくない。
夫はカレを自身の裸にまとい、そのスケスケ具合をわたしに見せびらかし、いかにカレが元来の機能を失い役立たずの遺物であるかをしきりに証明したがっている。
そして言うのだ。
「こんなボロぞうきん早く捨てろ」と
おそらく夫は気づいていないが。その奇怪な行動は、異常なる嫉妬心ゆえのもの。
夫には理性を早く取り戻してほしいと心から願っている。妻の幸せを奪ったとて夫に幸せが訪れることはないのだ。